犬のお母さん
昨今、悪質な繁殖業者による虐待、繁殖犬の遺棄が報道されることで、これまでスポットが当たらなかった繁殖犬の存在が知られるようになりました。もちろんブリーダーさんによっては繁殖犬の心身の健康をきちんとケアしながら、健康な状態で引退させ、終生お世話をし、それが難しくても新たなきちんとしたオーナーさんを見つけられているところもあります。ですが、獣医師免許のない繁殖業者が無麻酔で帝王切開の手術をしたり、体がボロボロになるまで劣悪な環境で産ませるだけ産ませて、適切な医療も受けさせず、挙句の果てにボロ雑巾のように遺棄するケースも後を絶ちません。そんなことは明るみに出ず、店頭でただ可愛いからという理由でバッグや靴を買うように子犬が買われていく。
私がインスタをフォローさせていただいているドッグトレーナーのたかやまなおさんが、このような問題は、我が子をお迎えするときに、迎える側がその子の両親に会うことができたら解決するとおっしゃっていたことがとても印象的でした。よろしければこちらの投稿をご覧ください。
そうですよね。繁殖業者は子犬を買ってくれる大切なお客様に対し、不衛生な犬舎、1つの小さなケージにオスメス2頭が寿司詰めにされ糞尿にまみれているような劣悪な飼育環境、一度も櫛を入れたことがないのでは?と思うようなネグレクトに近い扱いを見せるわけにはいかないでしょう。また子犬を迎えるオーナーさんもその子の親の存在に気付くことで、迎える子犬だけではなく、親にも健康で幸せであって欲しいと願うことでしょう。そうした構図が出来上がることで、その子の親の健康状態、衛生環境、幸福度も含めて商品価値になったら、不幸な繁殖犬がいなくなるのではないかと思います。
ヒメのお母さんは野犬です。繁殖犬ではありません。ヒメのお母さんのお話しをするのになぜこんな話をするのか?
ヒメをお迎えしたとき、ヒメは山の中で一人で保健所によって捕獲されたと聞いていました。親兄弟とはぐれてどんなに心細かったことか。一体何を食べて生き延びてきたのだろうとこみ上げるものがあるのと同時に、ヒメのお母さんは、野生の世界でヒメをどんな思いで産み育てていたのか?お母さんと兄弟は今どうしているのか?まだ過酷な野生の世界で生きているのか?捕獲されたとしたら無事に家庭に迎えられているのか?最悪の事態になっていないか?ずっと気になっていました。1つの命をお迎えする時にはこのように親兄弟の存在にごく自然に思いを馳せることができるのに、ひとたびペットショップの店頭に商品として陳列されると、親兄弟の存在に意識がいかなくなる。やはり生体販売は、命を軽んじた歪んだビジネスなのだと思います。

2021年9月愛護センターから現地ボランティアさんが引き出してくださった時の画像

2021年9月お見合いの時の画像
ヒメのルーツを探して
ヒメをお迎えしてから、香川県から保護犬を迎えられた方のインスタを探してみたり、香川を拠点に保護活動をされている方のアカウントをフォローしたりして、ヒメに似た香川県出身で月齢が近そうな子を見ると、ヒメの兄弟ではないか?と、DMでやりとりさせていただいたりしていました(残念ながら合致する子には出会えていません)。
ヒメをお迎えして2年以上経過した今、香川県で保護活動をされている方のインスタアカウントを新たに見つけ、過去の投稿まで遡って見ていた時、香川県の某保健所の保管期限掲示の画像の中に、赤ちゃん時代のヒメではないか?と思われるそっくりな子を見つけました。そしてヒメと思われる子の画像の上には、今現在のヒメに似た子の画像が。しかも、同じ場所で、同じ時刻に保護され、推定年齢は1~5歳のメスとの記載。ということは、ヒメと同じ捕獲器に入った子ということ。そしてそれはヒメのお母さんだと直感しました。
すぐさま、保護主さんにその画像を確認いただくと、ヒメと思われる画像は「確かにヒメちゃんです」と。そして保護主さんがヒメを迎えるにあたりヒメを引き出してくださった香川県のボランティアさんとのやり取りのLINEを改めて確認してくださったのですが、当時ヒメは一旦は保健所から愛護センター移送が決まったものの、血液検査でバベシア症(マダニ感染症)と分かり、殺処分対象となったことから、香川県のボランティアさんが急いでヒメを引き出してくださり、その際にヒメのお母さんと思われる子の引き出しはなかったこと、その後のヒメのお母さんと思われる子がどうなったかは分からないことを教えてくださいました。
同じ場所で母子が一緒に捕獲され、同じ場所でしばらく保護されていたにも関わらず、子犬だけが引き出され、母犬の安否は不明。とてもとても残酷なことのように思いますが、犬だけで年間2,000頭以上が殺処分されている日本において、せめて殺処分対象の子犬だけでも引き出していただいたことに、感謝せざるを得ません。
殺処分。まるで不用品処分のように軽い響きですが、とても残酷なんです。そしてそんな状況において、一匹でも多く助けてあげたいという気持ちをもって、今もボランティアさん同士が連携して、奔走してくださっているのです。
命をお店で買うのではなく、ぜひこうした子たちの命を1つでも多くお迎えしていただきたい。心の底から思います。

※保管期限掲示。下段がヒメ。その上はヒメのお母さんと思われる子。
ヒメのお母さん
ヒメのお母さんがまだどこかで生きていて、お迎えを待っているとしたら、、、。そんなことを思い、その保管掲示を出していた保健所に問い合わせをするも、やはり返信はなく。。。嫌な予感がしました。でも諦め切れない。
インスタで繋がっている関西圏で保護活動をされている方にお母さんの安否を確認する手段が他にないかご相談したところ、香川県で個人で保護活動をされている方をご紹介いただき、お電話でお話しすることができました。彼女は香川県の殺処分対象の成犬も長きにわたって保護されてきた方ですが、ヒメのお母さんの安否は分からない。でもご自身の経験から、「行政文書開示請求」をかけることができると。開示請求は、不開示情報が記録されている場合を除き、行政文書又は法人文書を開示しなければならないことからほぼ確実に得たい情報が得られることを教えてくださいました。ただ、最悪のケースになっている可能性が高いことから、覚悟をしておくように言われました。
情報開示請求
早速、香川県のホームページから、行政文書開示請求申請書をダウンロードし、必要事項を記入して申請書窓口の県民室に送付しました。しばらく経ってから、開示決定通知書が送られてきたため、続いて開示の実施申出の手続きをしました。
それから2週間くらい経ったある日、封書でたった1枚の書類が送られてきました。
その書類には「狂犬病予防法に基づき抑留した次の犬について、同法第6条9項の規定により、殺処分してよろしいか。(殺処分日:9月14日)」の文字が。
その下には3頭の犬の捕獲日時、捕獲場所、種類、毛色、性別、体格、評価額、評価者印、殺処分分類が一覧になっていました。そしてその一覧の上部には主任、副主幹、課長、次長、保険所長の印が連なっていました。ヒメのお母さんと思われる子は、9月3日の夕方に捕獲され、わずかその11日後に殺処分されていました。
なんともやるせない思いです。本当に悲しい。悔しい。。。ただ、保健所の方を責めるつもりはありません。彼らは決められた任務を全うしているのです。命を殺めるという苦しい決断をし、実行しなければならない任務なのです。
それでも、殺処分することしかできないのなら、捕獲しなければいいのに。これ以上野犬が増えて困るというなら、狂犬病注射をして不妊手術をして、リリースしてくれればいいのに。。。殺すコストを生かすコストに使ってくれればいいのに。。。そんな思いが頭を駆け巡ります。
助けることができなくてごめんなさい。何もすることができなくてごめんなさい。存在にすら気付いてあげることができなくてごめんなさい。ただただ申し訳ない気持ちでいっぱいです。ヒメにそっくりなお母さんの写真を見るにつけ、胸が押しつぶされそうです。
あなたが守ってくれた命を、私はただただ守り、幸せにします。そして私にできることは鼻くそほどに小さいけれど、一つでも多くの尊い命が家族に迎えられるよう、こうして情報を発信していって、犬がモノではなく「命」とし扱われる世界、殺処分のない世界、生体販売のない世界に貢献していきます。
合掌。

